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八十島プロシード株式会社の概要
精密樹脂製品の製造・3Dプリント・測定受託サービスを展開
八十島プロシード株式会社は、1937年の創業より「スーパーエンジニアリングプラスチック」の切削加工を生業としてきた老舗の樹脂製品メーカー。半導体を中心に、医療、FA・ロボット、車両、航空宇宙と、高い精度を要求される分野に向けて、様々な製品の製造を行っている。「プラスチックというと文房具などの大量生産品をイメージしがちですが、私たちが作っているのは、少量多品種。半導体の製造装置や人工関節などのインプラント、その他医療機器に搭載されるような要件の厳しい精密部品が中心です」と村上氏。
また2011年からは3Dプリンターの性能向上に合わせて、3Dプリントの受託事業に進出。さらに翌2012年からは、3DスキャンやCTスキャンを使った測定・リバースエンジニアリングの受託サービスも始めた。X線CT装置・ZESS METROTOM 1500 G3は、そんな同社の測定・リバースエンジニアリングに活用。人工衛星に搭載されるダクトなど、内部まで入り組んだ複雑な形状をした構造物を非破壊かつ高精度で測定できるとあって、多くの企業から引き合いが届いているとのこと。なお2023年4月現在、X線CT装置の最上位機種であるZESS METROTOM 1500 G3で受託測定を行っている企業は、日本国内ではまだ少ない。
ZEISS METROTOM 1500 G3の導入背景
3Dプリント事業の拡大を図る中でX線CT装置の必要性を認識
ZEISS METROTOM 1500 G3の導入のキッカケは2020年、神戸ポートアイランドに、本部テクノロジーセンター、神戸Fab、AM検証センターの機能を併せ持つ建屋が新設されたことに始まる。建屋新設に伴い、3Dプリンターの設備を増やして事業拡大を図る中で、どうしても必要となってきたものが3Dプリント製品の品質の担保だった。
なぜ品質の担保が難しかったのか。その理由は大きくふたつ。ひとつ目は測定面。「切削加工や金型では実現できないような、入り組んだ形状のものを作れる点が3Dプリンターの特徴です。しかしそうした複雑な形は、従来の三次元測定機や3Dスキャナーなどでは測ることができませんでした」と村上氏は語る。そしてふたつ目が信頼性。村上氏曰く「特に日本では3Dプリント品が最終製品に採用されている実績が少なく、データも少ないため、採用を躊躇されるお客様がまだ数多くいらっしゃいました」とのこと。
そこで検討したのが、X線CT装置の新規導入だった。「X線CT装置を使って製品内部まで検証すると共に、その結果をオープンにすることで、3Dプリント品を最終製品として採用することに対する敷居を下げたいという思いがありました」(井上氏)。
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営業企画部 新領域開発室 マネージャー 村上 卓弥氏
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本部テクノロジーセンター リーダー エンジニア 井上 準士氏
X線CT装置の選定
大きな製品の寸法を高精度に測定できる点が選定の決め手
実は八十島プロシードにとって、ZEISS METROTOM 1500 G3は初のX線CT装置ではない。「カールツァイスさんのX線CT装置を導入する前は、他社製のものを使っていました。しかし対応可能なワークサイズも小さく、観察用CTであったことから、使用用途は限定的でした」と村上氏。
そこで新たなX線CT装置を選定するにあたり、次のような条件を設けた。
<高精細な測定が可能>
「マイクロフォーカスX線CT装置と呼ばれるX線の焦点サイズが、ミクロン単位になっている機種かどうかは選定の必須条件でした」(井上氏)
<大きな寸法が測定できる>
「3Dプリンターはどんどん大型化しており、それに伴いワークサイズも大きくなってきています。そのため大きなものが測れるかどうかも重要でした。その中でもZEISS METROTOM 1500 G3が、マイクロフォーカスCTで屈指の撮影領域φ615×800を有していることは大変魅力的でした。」(井上氏)その結果、ZEISS METROTOM 1500 G3の導入が決定した。「私たちが求める要件をすべて満たしているX線CT装置は他にありませんでした。さらに、ドイツ技術者協会で定められた測定精度の規格である"VDI/VDE"に準拠し、精度保証がされている点も、大きな決め手になりました」と井上氏は語る。
ZEISS METROTOM 1500 G3の導入効果
測定できる製品の幅が広がり、受託測定のお問い合わせも増えています
ZEISS METROTOM 1500 G3導入によって得られた効果は、大きく次の4点が挙げられるとのこと。
<METROTOM目当ての測定依頼が増加>
「現在、日本国内でZEISS METROTOM 1500 G3を保有している企業はまだ少なく、特に測定サービスを受託している企業は、ほとんどありません。そのため、ZEISS METROTOM 1500 G3を持っていると知ったメーカー様から、機種指定でご依頼をいただくことが増えてきました」(村上氏)
<測定できる素材や寸法の幅が広がった>
「弊社は樹脂製品を扱うメーカーということもあって、測定のご依頼も樹脂製品が中心でした。ところがZEISS METROTOM 1500 G3の導入によって、アルミ、セラミック、ゴム、カーボンなどさまざまな素材のご相談をいただけるようになってきました」(井上氏)
「また3Dスキャンでは解像度が足りないため、お断りしていたような小さな部品も、ZEISS METROTOM 1500 G3があれば測定できるようになりました。これまで受けられなかった難しい依頼が受けられるようになった点も大きな効果です」(藤原氏)
<測定中に手離れできる>
「通常、3Dスキャナーなどで測定を行う場合は、データを取り終えるまで機械の側に人が付きっきりでいる必要があります。難しいものの場合、半日から1日作業になることもあります。しかしZEISS METROTOM 1500 G3は、条件設定さえ終えれば、あとは勝手にデータを取得してくれます。ものによっては1時間近く測定に掛かる製品もありますが、その間は手離れして別の作業ができるので、作業効率も非常に良くなりました。」(藤原氏)
<より適切な見積もりが可能になった>
「ZEISS METROTOM 1500 G3は、たった20 ~ 30分程度で簡単なテストスキャンを行えます。そのためリバースエンジニアリングの見積もりがより適切になりました。これまでは、いざデータを取ってみたら思いのほか複雑な形状をしており、見積もった工数以上に手間が掛かってしまうこともありました。テストスキャンのお陰でそうした状況に陥ることがなくなったのも、現場の人間としては助かっています」(井上氏)
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ZEISS METROTOM 1500 G3に対する評価
誰でも素早く・ミスなく測定ができる使い勝手の良さが魅力
1年近く活用したからこそ感じたZEISS METROTOM 1500 G3の魅力を伺ったところ、導入理由でもある性能面と共に、現場の人間から挙がってきた言葉は「使い勝手の良さ」だった。「電圧やフィルターなど測定条件を設定すると、画面上にヒストグラムが表示されます。このヒストグラムが一定の範囲内に収まっていれば、対象物が問題なく測定できるという目安になってくれる機能が付いているのは、とても便利ですね。素早く、ミスなく測定が進められます。取り直すこともほとんどなくなりました」と藤原氏。また井上氏も「3Dスキャナーを使いこなすには職人技的なノウハウが必要です。そのため、使う人によっては寸法の精度が悪くなってしまうこともありました。その点ZEISS METROTOM 1500 G3は、ちゃんと基礎的な教育さえ行えば、覚えたての人でも良いデータが取れます」と語った。
その使い勝手の良さは現場にも浸透しており、X線CT装置が必要でない状況でもZEISS METROTOM 1500 G3を活用する機会は増えてきたと言う。「他の測定機と同等か、それ以上の精度で測定できるので、重金属の製品などでない限り、高い頻度でZEISS METROTOM 1500 G3を使っています」(藤原氏)
今後の展望
3Dプリント・CTスキャンの事業拡大と測定の自動化が将来的な目標
そんな八十島プロシードに今後の展望を伺ったところ、3Dプリント事業との連携、CTスキャン受託測定事業の認知拡大、測定の自動化の3点を進めていきたいとのこと。「弊社は3Dプリント品を最終製品として使っていただくことを、ひとつの大きな目標として掲げています。ただ3Dプリンターを使った製品は複雑な形状ものが多いので、その品質保証としてZEISS METROTOM 1500 G3による測定結果を活用していければと思っています」と村上氏。さらに、認知の獲得についても「八十島プロシードに測定を依頼すれば、非破壊かつ高精度で測定できると知ってもらって、多くのお客様の課題解決に繋げていければと考えています」とも
語る。
また井上氏からは「3Dプリンター導入などを含め、製造現場では自動化が進んでいるので、測定現場でもどんどん自動化を進めていきたいですね。それが出来る能力をZEISS METROTOM 1500 G3は持っていると思います」とのお言葉もいただいた。
そうした展望の実現のために、カールツァイスに期待することを聞いてみた。「先日、カールツァイスのエンジニアの方が来社されて、X線CTに関する困りごとや疑問について色々と教えていただきました。X線CTの経験がまだまだ少ない私たちにとって、この時間は非常にありがたかったです。今後もこうした形で、相談できる機会を作っていただけることを期待しています」(村上氏)
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本部テクノロジーセンター エンジニア 藤原 匠希氏