加々良クリエイトの会社概要
木型、高精度砂型鋳造、切削加工、検査をワンストップで提供
愛知県碧南市で主に自動車関係部品の試作品づくりを手掛けている加々良クリエイト。試作品づくりとは量産に入る前段階の行程にあたる。顧客から図面を受け取って1個の試作品をつくる初品立上業務、初品立上をもとに量産を想定した数十個の製品をつくる流動品検査業務の2つが同社の大きな生産業務となる。
同社の強みは4つの生産業務行程、木型、高精度砂型鋳造、切削加工、検査をワンストップで提供できること。「行程の1つを手掛ける会社はあっても、当社のように木型、高精度砂型鋳造、切削加工、検査の行程をワンストップで提供する会社は多くありません。こうした国内トップレベルの生産体制を展開できているのは、専門的な技術やノウハウを持ったエンジニアが多数在籍しており、スキルを存分に発揮してくれていることが最大のアドバンテージだと自負しています。加えて、最新の工作機械や計測機器を多数取り揃えていることも当社の大きな特長といえるでしょう。」と加々良氏は語る。
ワンストップで提供できることのメリットは管理工数とコストの削減、短納期。これによって同社は顧客の信頼を勝ち得ている。
1つの会社ですべてのマネジメントが可能なら、発注する側は管理工数を大きく削減することが可能だ。それにともなってコストも削減できる。納期に関しても「社内での生産における綿密なミーティング結果を顧客と共有。木型がスタートすると同時に高精度砂型鋳造、切削加工、検査もスタンバイに入ります。こうした事前の共有情報などでリードタイムが少ないため、短納期で生産することができます。」(加々良氏)
「つくったら測る。測れないものはつくらない。それが当社のモットー。」と加々良氏が言うように、徹底した検査による品質保証も同社の強みだ。初品立上業務でも流動品検査業務でも徹底的に検査を行い、生産品のクオリティを担保している。
METROTOM 1500 225kV G3の導入背景
初品立上業務・流動品検査業務における検査体制の強化を目指す
今回、加々良クリエイトがMETROTOM 1500 225kV G3を導入するに至った背景は検査体制の強化にある。厳密にいうと初品立上業務においては検査工程の効率化、流動品検査業務においては保証精度の向上を目指した。
初品立上業務で効率化を図りたい検査工程は、①顧客先図面に基づく寸法測定、②顧客先3Dデータに基づく形状判定、③内部欠陥(巣)確認(図1)。それぞれの検査は使用する計測機器が異なっており、どうしても検査業務が煩雑になってしまう。「この検査行程の大きな課題は、計測機器が異なることもあって①②③を直列でしか回せません。この検査行程に8時間かかる場合、どう頑張っても8時間を短縮することができませんでした。」と杉浦氏は語る。
流動品検査業務については、抜取り検査で顧客先の要求部や寸法不安定部の寸法測定を行っており、現状で顧客が求める保証精度を満たしていた(図2)。「流動品検査業務は現在の妥当性確認で問題はなく、顧客からは十分な検査体制と評価をいただておりました。しかし、我々のモットーは、『つくったら測る。測れないものはつくらない。』です。さらなる保証精度の向上を目指せないかと思案していました。」(加々良氏)
図1 初品立上業務の検査行程
図2 流動品検査業務の行程
図3 METROTOM 1500 225kV G3 導入後の検査体制イメージ
検査体制の強化をX線CT装置に求めた理由
並列の検査が可能、割断不要で内部を検査できる
検査体制の強化にあたり、X線CT装置に着目した理由は以下の通りだ。
<並列の検査が可能>
「高性能なX線CT装置があれば、初品立上業務の①②③の検査行程に必要なデータを1回のスキャンで得ること可能。そのデータがあれば①②③の検査を並列で行えるため、検査工程の大幅な効率化、そしてさらなる短納期が期待できます(図3)。」(杉浦氏)
<実用的な計測機器>
「X線CT装置は高価なこともあって、以前は公的な試験場などに足を運ばなければ触れることができませんでした。しかし近年は性能の向上と低価格化が進み、導入を検討できるまでとなりました。実際、当社でも小型のX線CT装置を導入し、初品立上業務で使用しており、その利便性を実感しています。」(加々良氏)
<割断が不要>
「複雑化する部品のなかで、入り組んだ箇所の計測や鋳造内部欠陥の検査は必須。前述したように、当社でも初品立上業務でX線CT装置を利用していますが、小型のため、どうしても割断は必要になります。測定が目的の初品立上業務の試作品なら割断しても問題はありませんが、量産品に近いものをつくって顧客に納品する流動品検査業務においては、割断は歓迎されません。そうなると、割断せずに内部空間の計測できるのは大型かつ高性能なX線CT装置のみ。流動品検査業務で割断の必要がないX線CT装置を使って検査すれば、さらなる保証精度の向上を図ることができます。」(杉浦氏)
X線CT装置の選定
高い信頼性と性能で他のX線CT装置をリード
X線CT装置導入に向け、加々良クリエイトは国内で販売されている7社の製品をピックアップ。最終的にはカールツァイスを含む2社のX線CT装置で比較・検討を行った。そこで、METROTOM 1500 225kVを選定した理由は以下の通りだ。
<高い基本性能>
「撮影範囲と搭載可能な最大ワーク寸法は計測用X線CT装置の中で最大。さらに、最大可搬ワーク重量は50kgと基本的な性能面に申し分ありませんでした。」(杉浦氏)
<高いコストパフォ-マンス>
「X線CT装置は高価な計測機器ですが、安価に導入できればそれに越したことはありません。カールツァイスには価格面でもいろいろご配慮いただき、大変感謝しています。」(加々良氏)
<高い信頼性>
「カールツァイスの製品というだけで、顧客からは大きな信頼感が得られます。しかも、カールツァイス製品を販売しているのは計測機器のフロントランナーである東京精密。東京精密のバックアップでカールツァイス製品を導入できるわけですから、これほど大きな安心感はありません。」(加々良氏)
METROTOM 1500 225kV G3
有限会社加々良クリエイトの広々とした工場内。
最新の工作機械も多数導入されている。
METROTOM 1500 225kV G3導入に向けた進捗状況
ショールームのデモで素晴らしさを実感
同社はMETROTOM 1500 225kV導入に向けて2019年11月、東京精密に対してデモを依頼した。翌年の2020年2月、下位機種のMETROTOM 800 225kVが設置されている東京精密 土浦営業所に測定対象のワークを送付。しかし、ワークが大きすぎたため、METROTOM 800 225kVではスキャン範囲に収めることができなかった。
同年4月、杉浦氏はカールツァイス 名古屋ショールームを訪れ、より大きなワークを測定できるMETROTOM 1500 225kV G2の実機と対面した。「最初の印象は、とにかく大きいと思いました。私の測定機器の概念を覆し、工作機械のような印象を受けました。」(杉浦氏)
名古屋ショールームに設置されている現物のMETROTOM 1500225kV G2を安価に購入できる提案に興味を示した杉浦氏。しかし、解像度や高速スキャンに磨きがかかり、さらに大きなワークを測定することができる上位互換の新機種、METROTOM 1500 225kV G3が発売されるアナウンスもあって、ここでの結論は保留となった。
同年6月、最新のMETROTOM 1500 225kV G3の実機がカールツァイス 大阪ショールームに到着することを知り、杉浦氏はすぐに足を運んだ。実際のデモでは、かなり大きなサイズのワークをスキャンできることを確認。さらに、解像度、スピード、出力データすべてにおいて満足できるものだった。「これまで約20年間、計測・検査の仕事に携わってきましたが、そのなかでMETROTOM 1500225kV G3の実機とデモを見たときが、もっとも心が躍りました。本当に「素晴らしい」の一言です。これさえあれば、より良い検査体制を構築できると思いました。」(杉浦氏)
加々良クリエイトにとってMETROTOM 1500 225kV G2の価格は魅力だったが、今後長期にわたって使い続けていくことを考え、METROTOM 1500 225kV G3をを選択し、2021年の納入を目指している。
補助金の活用
さまざまな支援を活用すれば中小企業でも導入できる
METROTOM 1500 225kV G3のような高価なX線CT装置は、大手企業でも導入は簡単ではない。加々良クリエイトの規模となれば、さらに難しくなる。そんな同社が導入に踏み切ったのは顧客からの要望に誠実に対応したいという想いだった。
「まず、導入に際し金融機関の支援は必要です。そのために、導入後の償却プランについて綿密な計画を立てて理解を得ることが出来ました。しかし、会社を運営するうえで少しでも負担を軽減したのは事実。やはり、補助金の力は借りたいと思っています。今回、当社が申請を予定しているのは上限1億円として購入金額の2/3まで補助金が出る『事業再構築補助金』です。我々とすれば高額な設備投資となりますが、当社のような町工場でも、頑張れば高価なMETROTOM 1500 225kV G3を購入できることをお含みおきいただきたい。当社と同様に今後の事業展開で苦悩されている企業も多いかと思います。当社の努力が良き一例になればという想いです。」(加々良氏)
有限会社加々良クリエイト 代表取締役 加々良 茂樹氏
METROTOM 1500 225kV G3設置前の検査室
今後の展開と期待
自助努力と関係各社のサポートで習熟度を上げていきたい
加々良クリエイトがMETROTOM 1500 225kV G3を導入予定であることは、すでに顧客に告知済み。さらなる短納期、保証精度の向上が期待できるとあって顧客の反応は上々だ。「当社は顧客に対し、検査体制のスピードアップと精度向上をうたうことができます。実際にMETROTOM 1500 225kV G3が導入され、充実した検査体制・保障体制が顧客に浸透すれば、業務拡大につながっていくのではないかと期待しています。」と早川氏は語る。
同社はMETROTOM 1500 225kV G3の導入に備え、設置場所の確保や運用体制の再編などを着々と進めている。しかし、同社にとってMETROTOM 1500 225kV G3のような測定機器導入は初の試みで、不安がないわけではない。
「これから、習熟度を上げていく努力を全力でしていきますが、いたらない部分や勉強不足のところも出てくるかと思います。やはり、さまざまな場面で東京精密そしてカールツァイスの手厚いサポートは不可欠だと考えます。ご面倒をかけることもあるかと思いますが、引き続きよろしくお願いします。」(加々良氏)