JAPAN TESTING LABORATORIES株式会社の概要
計測・試験・分析でメーカー開発品の品質や信頼性を評価
JAPAN TESTING LABORATORIES株式会社(ジャパン テスティング ラボラトリーズ株式会社/以下:JTL)は、メーカーの開発品の品質や信頼性を"計測・試験・分析"を行うことで評価する「技術サービス」を提供する会社。
自動車、航空宇宙、電池、半導体、エネルギー、医療機器、食品など、対応可能な技術分野が多岐に亘っている点、加えて個別の評価依頼だけでなく、技術課題の解決のサポートや"BPO(Business Process Outsourcing)"と呼ばれる評価部門のアウトソーシングなど、開発プロセス全般におよぶ幅広いサービスを展開している点が大きな特徴。「日本国内で評価サービスを提供している会社の多くは、材料メーカーや鉄鋼メーカーなどの子会社です。独立して多彩な評価サービスを提供するだけでなく、計測・試験・分析をすべて担うことができるのは国内では弊社だけです。」と五島氏は語る。
ZEISS METROTOM 800 130kVが活用されているX線CTのサービスは、全国10拠点の中の名古屋事業所内、計測センターに所属。本センターでは、三次元測定機35台、光学式デジタイザ3台、そしてX線CT6台などの測定機器を駆使して、依頼された対象物を"サイズ"という切り口から評価。「JTL Messtechnik」をコンセプトに掲げて、より良い計測を日々追求し続けている。
ZEISS METROTOM 800 130kVの導入背景
複雑かつ小型の樹脂製品の内部測定にX線CT装置を活用
2014年に、とある顧客から入り組んだ形状の小型樹脂製品の内部測定を依頼されたことが、X線CT装置導入のきっかけ。この時はカールツァイスにデモを依頼し、そのデータを顧客に報告する形で対応した。その際に測定を担当した五島氏は「内部形状まで丸ごとスキャンした精度の高い3Dデータを、PCの画面で拡大・切断しながら自由自在に測定できる点に大変驚きました。三次元測定機と同じ測定用ソフト『CALYPSO(カリプソ)』内で扱えることも魅力的でした。」と言う。
またワークの切断や治具の作製、サーフェイサーの塗布などが不要になるうえ、プローブの衝突やカメラ・レーザーが届くかを気にしなくて済むようになるなど、三次元測定機や光学式デジタイザで抱えていた手間や課題を、ほぼすべて解決してくれていることもあって、現場スタッフの間では導入を期待する声が上がった。
ただし本格導入は2019年まで待たなければいけなかった。その理由は、高額な機器導入への投資に対する社内承認が得られなかったことと、X線CT装置が必要な案件がそれほど多くなかったため。そこでまずは『CALYPSO-CT』のソフトを導入し、外部のZEISS METROTOM 800 130kVでスキャンしたデータを社内で測定、結果報告するサービスをスタート。そうして実績を積み重ね、依頼件数を増やしていくことで、ZEISS METROTOM 800 130kVの導入を果たすのだった。
計測用X線CT装置 METROTOM 800 130kV
X線CT装置の選定
メーカーへの信頼と精度保証が機器選定のポイント
ZEISS METROTOM 800 130kV選定の理由はふたつ。ひとつは、これまでの実績からメーカーへの信頼感が高かったこと、そしてもうひとつが、高い精度で測定ができたことだ。「測定用X線CT装置のメーカー選定については、カールツァイス一択でした。弊社では三次元測定機にカールツァイス社製の製品を数多く導入しており、その使い勝手や性能などの実績から、ブランドへの高い信頼感があったためです。また複数の機種の中からZEISS METROTOM800 130kVにしたのは、その中でもより高い精度での測定が行えるスペックを備えていたからです。実際に三次元測定機などとのベンチマークを行い精度的に満足できるものだった点も、決め手のひとつとなりました。」(五島氏)
ZEISS METROTOM 800 130kVの導入効果
形状すべてを高精度で測定することで工数を低減
計測にまつわる工数が劇的に低減できたことが、ZEISS METROTOM 800 130kV導入の大きな効果。これまでは、例えばコネクタのような小型樹脂製品を測定する場面では、端子の数だけ"樹脂包埋→切断→研磨"といった作業を行わなければならなかった。それが今では、CTデータを自動プログラムで処理することで、形状すべてを高精度で採れるようになった。また"面"でデータを採れるため、1回測定してしまえばそのデータを使って、後から測定位置を変えて測り直すことが出来る点も、工数低減に大いに役立っているとのこと。「不具合系のご依頼をいただいた場合、まずワークのどこを測定するのか、そこを模索するところから始めなければなりませんでした。しかしZEISS METROTOM 800 130kVなら、面でCADと比較したカラーマップが作れるため、効率良く戦略を立てた計測ができるようになりました。体感では計測にかかる工数は、半分くらいになったと感じています。」(杉江氏)
「実はこういう変形が内部で起きている、といった不具合のメカニズムが見えてきやすいのもZEISS METROTOM 800 130kVの良いところだと思います。お客様からしても対策が打ちやすいため、開発期間の短縮に繋がっているのではないでしょうか」(五島氏)
ZEISS METROTOM 800 130kVに対する評価
適正な条件下でスキャンを行うことで高い精度での測定が可能
実際にZEISS METROTOM 800 130kVを2年近く運用してみての評価は、以下の通り。
<高精度での測定が可能>
「小さなボイドや繊維配向を測定する際に、ブレが小さくコントラストの高いデータが取得できる点は特にありがたいですね。これは、フラットパネルが16インチの装置とほぼ同じ解像度と品質なんですよ。弊社には6台のX線CT装置がありますが、精度が要求される場合は、ZEISS METROTOM 800 130kVの出番となります」(杉江氏)
「弊社が保有する他社製のX線CT装置だと、測定した寸法はあくまで参考値という扱いにしかなりません。しかしZEISS METROTOM 800 130kVは、精度規格に準拠した"測定用"X線CT。非破壊で高精度な内部寸法が測れるため、非常に助かっています。X線CT装置を使わないメンバーにとっても、お客様への提案の選択肢のひとつになってくれています。お陰で営業面での幅が広がりました。」(五島氏)
<適切な測定条件が分かる>
「ZEISS METROTOM 800 130kVは、出力とスポット径の相関が取れた適切な条件下でないとスキャンを実行できない仕様となっています。一見不便に思えますが、逆に言えば無茶なスキャンが出来ないため、高い品質で測定が行えます。またそのお陰で、正しい測定条件を見通しやすくなったため、他社のCTスキャンにおける条件出しの参考になってくれている点も、実はありがたいと感じています。」(五島氏)
またZEISS METROTOM 800 130kVそのものに加えて、アフターサービスについても高く評価。測定における相談に複数の解決策を提案する点に加え、機材トラブルにおける対応力も良かったと五島氏は語る。「基本的には壊れにくいのですが、それでも長く使っていると小さな機材トラブルは出てきます。そんな時も、例えば仮のハードディスクをすぐに繋げて応急処置をし、交換用のパーツを揃えたら改めて修理……と、なるべく現場の作業がストップする期間を最小限にして、期間損失を抑えてくれるよう考えていただけるのは助かりました。」(五島氏)
評価用ソフトウェア・CALYPSOに対する評価
三次元測定機とX線CT装置の間でデータ・プログラムの流用も
ZEISS METROTOM 800 130kVでスキャンしたデータは、カールツァイスと東京精密が共同開発した評価用ソフトウェア『CALYPSO』上で取り扱うことになる。
JTLでは元々、三次元測定機で本ソフトウェアを使用しているメンバーも多かったため、違和感なく、またスムーズに使いこなせているとのこと。「『CALYPSO』は、長い年月を掛けて洗練されてきただけあって、非常に優れたソフトウェアです。不満点もほとんどありません。三次元測定機でやっていたことをそのままX線CT装置に持っていったり、逆にX線CT装置で測定したことを三次元でデータ確認する用途にも使たったりできますし、プログラムの流用もできる。この利便性の高さは大きいですね。そういう意味では、『CALYPSO』が使えることも、ZEISS METROTOM 800130kV導入のメリットのひとつだと思います。」(杉江氏)
CALYPSO操作中画面
今後の展望
X線CT装置のニーズは今後さらに高まると予想
JTLの中でZEISS METROTOM 800 130kVは、工数の大幅な削減や非破壊で高精度の測定を実現する他、営業面で貢献するなど、多くの実績を上げていると評価する五島氏。そんな五島氏に、今後カールツァイスに期待することを伺った。
「計測の世界は、これまで接触型だけだった世界から、非接触の光学式が出てきて、今は非破壊のCTも登場してと、日々進化しています。これまで出来なかったことも、どんどんクリアされていっています。ZEISS METROTOM 800 130kVの導入によって、弊社ではお客様により良い提案が出来るようになりましたし、より満足度の高いサービスを提供できるようになりました。しかし今はまだ端子や電池など、樹脂や金属が混ざった複合素材や、中に液体、ガスの入った製品は、なかなか精度高く測定はできません。それが1スキャンで高精度に測定できるとしたら、より業界の成長や、製造そのものの効率化に繋がっていくと考えています。今
後もX線CT装置を使った非破壊での測定ニーズは高まっていくことは間違いありませんので、ぜひそれが実現できる製品を開発していただけると嬉しいですね。カールツァイスさんは、業界の潮流を作る会社だと思っていますので期待しています。」(五島氏)